Exhibition Report | トウキョウ建築コレクション2015 - 東京藝術大学美術学部建築科|大学院美術研究科建築専攻 Tokyo University of the Arts Facu
「輪郭ー大地と空」桝永絵理子「0→」竹之内芙美「"転換"の作法」原田健介「輪郭ー大地と空」桝永絵理子
本研究は、インド、ラダックの仏教僧院や伝統住居を2カ月間調査し、その体験をもとにラダックのプガという地域を“公共地域”として保養所を提案するものである。
ラダックにはチベット仏教僧院が沢山残っている。2年前に訪れたとき、大地と空に触れながらそれぞれの場を巡るような僧院建築に感動した。すべてを露にしてしまうかのような圧倒的な大地の中で、僧院から一歩も出ずに過ごす人たちがいる。彼らにとって建築は、単なる機能性以上に、ある世界観や人生観を反映したものであるかのように感じられた。たとえば僧侶が暮らす場所は、大地を背に、谷間から吹き寄せる風を受け入れる簡素さがあり、西に沈む太陽を眺めながら眠る時間の流れが大切にされているように思われた。また建物の外壁は石灰を塗られており、補修する際に石灰が撒かれることで建物が大地と同化していく。私はそうした大地と人、建築の物語のある場所に身を置きたいと思い、この夏、修士制作として再度ラダックを訪れた。2カ月間、実測等を通して大地と建築の関係や暮らしを分析し、砂や石灰を画材として混ぜてスケッチをし、光や音、風など様々な状況が立ち現れる空間を記述してきた。
そして調査の中で、遊牧民の友人から彼の実家があるチャンタン高原の標高4,500mを越える遊牧地帯には病院がないために遊牧民の数が減っていること、『プガ谷』という温泉が湧き出ている地域は、莫大な地熱エネルギーを蓄えた土地として世界的に注目されているが、今後の開発のされ方によっては遊牧民の生活を脅かしてしまう恐れがあること、伝統医アムチに連れられて病の治療に訪れる人が沢山いるが温泉に浸かる場所がないことなどを知った。そこで、遊牧民地帯を巡りながらインタビュー、調査を行うことによって、できるだけ現実的なかたちで保養所を設計した。
現在、ラダックの都市レーでは近代化に伴って新たな建築の形を模索されており、コンクリートによる無機質な都市ができてきているが、住民の間においてそういった建築はあまり受け入れられていない。設計したプガという地域は停戦ラインにも近く、現状では共有地として使われていることから、この計画においても公共建築、さらに言えば公共地域となるように想定した。設計にあたってはラダックの素材
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